曲線上の一点に「ちょうど触れる」だけの直線をどうやって引くか?この直観的な問いは思いのほか深い——答えは極限を必要とし、その極限こそが微分積分学の理論全体が芽吹く種だ。
割線の傾き
f のグラフ上の点 (x0,f(x0)) を取る。その点と近傍の点 (x0+h,f(x0+h)) を通る**割線(secant line)**の傾きは
mh=hf(x0+h)−f(x0)
だ。この式 hf(x0+h)−f(x0) を、増分 h における x0 での f の**差分商(difference quotient)**という。
h をゼロに近づけると、第2の点が曲線上を第1の点へ向かってスライドし、割線が回転する。この過程が唯一の極限の直線に収束するなら、その極限の直線が (x0,f(x0)) における**接線(tangent line)**だ。
極限としての接線
定義。 極限
m=h→0limhf(x0+h)−f(x0)(1)
が存在して有限のとき、x0 における f のグラフへの接線は、傾き m をもち (x0,f(x0)) を通る直線
y=f(x0)+m(x−x0)
だ。極限 (1) が存在しない(あるいは無限大の)とき、曲線はその点において通常の意味での接線を持たない。
例:放物線 f(x)=x2
x0=2 のとき:
mh=h(2+h)2−4=h4+4h+h2−4=4+h.
h→0 で mh→4。点 (2,4) における接線は y=4x−4 だ。
例:平方根 f(x)=x
x0>0 のとき、分子を有理化すると:
mh=hx0+h−x0=x0+h+x01.
h→0 で mh→2x01。
角点と垂直接線
すべての曲線がすべての点で接線を持つわけではない。f(x)=∣x∣ は x0=0 に**角点(corner)を持つ:左からの割線の傾きは −1、右からは +1 に近づくので、極限 (1) が存在しない。f(x)=x1/3 は 0 に垂直接線(vertical tangent)**を持つ:差分商が有界でなくなる。
こうした失敗例が、次のチェックポイントでの微分の形式的な定義を動機づける。
まとめ
- (x0,f(x0)) と (x0+h,f(x0+h)) を通る割線の傾きは hf(x0+h)−f(x0) だ。
- h→0 での割線の傾きの極限が有限の数 m に収束するとき接線が存在し、その方程式は y=f(x0)+m(x−x0) だ。
- 角点や垂直接線があると、通常の意味での極限が存在しない。