銀行口座が年率100%で増えるとしよう。しかし年末まで待つのではなく、半年ごとに50%ずつ二回複利計算するとする。一度だけ計算する場合より多くなる。四回、十二回、毎日、一ミリ秒ごとに——最終残高は上がり続ける。無限大に向かって発散するのだろうか?実はそうではない:このプロセスはある特定の実数に収束する。それが**e**だ——変化量が現在量に比例するあらゆる現象の中心にある数だ。
複利成長と極限の列
1 から始め、n 回にわたって利率 n1 を適用して一年で積み上げる。一年後の残高は:
an:=(1+n1)n.
収束の様子を具体的に確認しよう:
| n | an |
|---|
| 1 | 2.000000 |
| 2 | 2.250000 |
| 10 | 2.593742 |
| 100 | 2.704814 |
| 104 | 2.718146 |
| 106 | 2.718280 |
列は 2.718 付近の何かに向かって上昇している。e を厳密に定義するには極限が存在すること——(an) が収束列であること——が必要だ。
列の収束
(an) が単調増加かつ上から有界であることを示す。実数で確立した R の完備性により、それだけで収束が保証される。
単調増加
n 個の (1+n1) と一個の 1 からなる n+1 個の正数に相加相乗平均の不等式(AM–GM inequality)を適用する:
n+1n⋅(1+n1)+1∗相加平均≥[(1+n1)n⋅1]n+11∗相乗平均.
左辺は n+1n+2=1+n+11 に簡略化される。両辺を (n+1) 乗すると:
(1+n+11)n+1≥(1+n1)n,
すなわち an+1≥an。列は単調増加だ。
3 で上に有界
**二項定理(binomial theorem)**を使って an を展開する:
(1+n1)n=k=0∑n(kn)nk1=k=0∑nk!1⋅≤1nkn(n−1)⋯(n−k+1).(1)
各因子 nn−j≤1 なので (1) の積はすべての k に対して 1 以下であり:
an≤k=0∑nk!1≤1+1+21+41+⋯+2n−11<3,
最後の不等式では k≥1 で k!≥2k−1 を使い、各項 k!1 は 2k−11 以下だから、等比数列の和が 2 になる。
3 より小さい値に留まる単調増加列は必ず収束する。これで次の定義を書く権利が得られた。
e の定義
オイラー数(Euler’s number) e を次で定義する:
e:=n→∞lim(1+n1)n.(2)
級数表示
不等式 (1) をもう一度見よう。n→∞ のとき、固定した各 k に対して比 nkn(n−1)⋯(n−k+1) は 1 に近づく(各因子がそれぞれ 1 に近づく k 個の積だ)。an≤∑k=0nk!1 という上界と、有限項だけ残した下界の両方が同じ値に挟みうちされることが示せる。結果として:
e=k=0∑∞k!1=0!1+1!1+2!1+3!1+⋯(3)
ただし 0!:=1 は慣例による。
分母の k! は任意の固定した指数関数より速く増大するので、級数は極めて速く収束する。最初の八項の和でも:
1+1+21+61+241+1201+7201+50401≈2.71827,
小数第五位まで正確だ。級数形式 (3) は理論的な研究でしばしば最も便利な表現となる。
数値と無理数性
小数第十二位まで:
e≈2.718281828459…
e は無理数(irrational)だ。 証明には級数 (3) を使う。背理法で e=qp(p,q は正の整数)と仮定する。(3) の両辺に q! をかける:
q!⋅e=k=0∑qk!q!∗整数+尾部∑∗k=q+1∞k!q!.
e=p/q より左辺 q!⋅e=(q−1)!⋅p は整数であり、右辺の第一和も整数(k≤q のとき k!q! は連続する整数の積)。したがって尾部も整数でなければならない。しかし:
尾部=q+11+(q+1)(q+2)1+⋯<q+11⋅1−q+111=q1≤1,
かつ尾部は明らかに正だ。1 未満の正の量は整数にはなれない——矛盾。ゆえに e∈/Q。
実は e は超越数(transcendental)(整数係数の多項式の根にならない)だが、これを確立するには現在の前提条件を超える道具が必要だ。
e が自然な底である理由
2 や 10 ではなく e が特別な理由は何か?答えは微積分にある:底 b>0 の中で、x↦bx の導関数が余分な乗数定数なしに最も単純になるのは b=e のときだけだ。同様に、底 e の対数(自然対数)の導関数は余分な因子なしに x1 になる。他の底を使えば、その底の対数に比例する補正が現れる。
これらの性質は指数関数と対数で詳しく探ることになる。
まとめ
- オイラー数 e は極限 e:=n→∞lim(1+n1)n によって定義される。列が単調増加かつ 3 で上に有界なので収束が保証される。
- 同値な表現として e=k=0∑∞k!1——部分和が任意の精度の近似を与える収束の速い級数だ。
- e≈2.71828(小数第五位まで)。
- e は無理数:e=p/q と仮定すると級数の尾部が 1 未満の正の整数になってしまう矛盾が生じる。
- e は指数関数・対数関数の唯一の自然な底だ——それらを解析的に定義したときに正確に明らかになる事実だ。