都市 A から都市 B までの走行中、位置と燃料消費の両方を記録するとする。走行中のある瞬間、瞬間速度と瞬間燃料消費率の比は、総走行距離と総燃料消費量の比に等しくなるはずだ。コーシーの定理はこの観察を厳密に定式化したものだ。二つの関数が同時に変化する状況を扱い、それらの変化率を並行して比較する。
定理の主張
定理(コーシーの平均値定理)。 f,g:[a,b]→R とする。
- f と g が [a,b] 上で連続、
- f と g が (a,b) 上で微分可能、かつ
- g′(x)=0 がすべての x∈(a,b) で成り立つ
ならば、
g(b)−g(a)f(b)−f(a)=g′(c)f′(c)(1)
を満たす c∈(a,b) が存在する。
注意。 条件3は g(b)=g(a) を含意する:もし g(b)=g(a) ならば、g に対するラグランジュの平均値定理を適用すると g′=0 となる内点が存在することになり、条件3に矛盾する。したがって (1) の左辺は定義される。
証明
境界値が一致する一つの補助関数を構成し、ラグランジュの平均値定理を適用するのが要点だ。
h(x):=[f(b)−f(a)]g(x)−[g(b)−g(a)]f(x)
と定義する。f と g が [a,b] 上で連続かつ (a,b) 上で微分可能なので、h も同様だ。計算すると:
h(a)=[f(b)−f(a)]g(a)−[g(b)−g(a)]f(a),
h(b)=[f(b)−f(a)]g(b)−[g(b)−g(a)]f(b).
その差は
h(b)−h(a)=[f(b)−f(a)][g(b)−g(a)]−[g(b)−g(a)][f(b)−f(a)]=0,
よって h(a)=h(b)。h にラグランジュの平均値定理を適用すると、h′(c)(b−a)=h(b)−h(a)=0 を満たす c∈(a,b) が存在し、h′(c)=0 を得る。h を微分すると:
h′(x)=[f(b)−f(a)]g′(x)−[g(b)−g(a)]f′(x).
h′(c)=0 とおくと [f(b)−f(a)]g′(c)=[g(b)−g(a)]f′(c) が得られる。g′(c)=0 かつ g(b)−g(a)=0 で割ると (1) が得られる。□
ラグランジュの定理との関係
g(x)=x とおくと、g′(x)=1 かつ g(b)−g(a)=b−a なので、(1) は
b−af(b)−f(a)=f′(c)
となり、これはまさにラグランジュの平均値定理だ。コーシーの定理はその厳密な一般化であり、ラグランジュの定理のすべての場合は第二の関数を恒等写像にとることで特殊ケースとして得られる。
パラメータ表示での解釈
x が x∈[a,b] において曲線 (g(x),f(x)) をトレースするパラメータであるとき、(g(a),f(a)) から (g(b),f(b)) への弦の傾きは g(b)−g(a)f(b)−f(a) だ。定理 (1) は、パラメータ値 c における曲線の接線が同じ傾き f′(c)/g′(c) を持つことを述べる。これはパラメータ曲線に対する平均値定理だ。
まとめ
- コーシーの定理:f,g が [a,b] 上で連続かつ (a,b) 上で微分可能であり、(a,b) 上で g′=0 ならば、g(b)−g(a)f(b)−f(a)=g′(c)f′(c) を満たす c∈(a,b) が存在する。
- 証明:h(x)=[f(b)−f(a)]g(x)−[g(b)−g(a)]f(x) と定義すると h(a)=h(b) が成り立ち、ラグランジュの平均値定理により h′ の零点が得られる。
- ラグランジュの平均値定理は g(x)=x の特殊ケースだ。
- パラメータ曲線に対しては、ある内部パラメータ値で接線の傾きが弦の傾きに等しくなることを定理は述べる。