導関数 f′ が何を測るかはすでに知っている — 瞬間変化率だ。しかし f′ 自身もひとつの関数であり、それが導関数を持つかどうかを問うことができる。この過程を繰り返すと高階導関数が得られ、曲率・加加速度(jerk)・テイラー多項式の係数などを符号化する。
帰納的定義
定義。 n 階導関数 f(n) を帰納的に定義する:
f(0):=f,f(n):=(f(n−1))′for n≥1,
ただし連鎖の各導関数が存在する場合に限る。
よく用いられる記法:
| 階数 | プライム記法 | ライプニッツ記法 |
|---|
| 1階 | f′ | dxdf |
| 2階 | f′′ | dx2d2f |
| 3階 | f′′′ | dx3d3f |
| n 階 | f(n) | dxndnf |
Cn と C∞ の空間
f(n) が区間 I 上で存在して連続であるとき、f∈Cn(I)(「f は Cn」または「f は n 回連続微分可能」と読む)という。C0(I) は単に連続関数の全体であり、C1(I) は連続な導関数を追加し、以下同様に続く。
すべての階の導関数を持つ関数は**滑らか(smooth)**と呼ばれ、C∞(I) に属する。
C∞⊊⋯⊊C2⊊C1⊊C0.
各包含は真の包含だ:Cn に属するが Cn+1 に属さない関数が存在する。
例。 f(x)=∣x∣3 は R 上で C2 だ(f′′=6∣x∣ が連続であるため)が、C3 ではない(f′′′(0) が存在しないため)。
高階導関数の例
多項式 p(x)=anxn+⋯+a0 に対して:
p(k)(x)=(n−k)!n!anxn−k+⋯(k≤n),p(k)≡0(k>n).
指数関数 ex に対して:(ex)(n)=ex がすべての n で成立する。
sinx と cosx の導関数は周期4で循環する:
(sinx)(n)=sin(x+2nπ),(cosx)(n)=cos(x+2nπ).
ライプニッツの公式
積の微分法則 (fg)′=f′g+fg′ はすべての階に一般化される。そのパターンは二項定理を反映している。
定理(ライプニッツの公式)。 f と g が n 回微分可能ならば、
(fg)(n)=k=0∑n(kn)f(k)g(n−k).
帰納法による証明。 基底ケース n=1 は積の微分法則だ。n でこの公式が成立すると仮定し、両辺を微分して各項 f(k)g(n−k) に積の微分法則を適用する。二項係数の漸化式 (k−1n)+(kn)=(kn+1) が和を n+1 の公式に再び組み上げる。□
例。 (x2ex)′′=(x2)′′ex+2(x2)′ex+x2ex=2ex+4xex+x2ex=(x2+4x+2)ex。
まとめ
- n 階導関数 f(n) は f(n−1) の導関数として帰納的に定義される。
- f∈Cn とは f(n) が存在して連続であること、f∈C∞ とはすべての階の導関数が存在することだ。
- 多項式は有限回の微分でゼロになる。ex・sinx・cosx は C∞ であり、n 階導関数が閉形式で表せる。
- ライプニッツの公式:(fg)(n)=∑k=0n(kn)f(k)g(n−k)。これは二項定理の直接類似だ。