標準入出力
Basis書くプログラムはどれも外部の世界と通信する必要がある — 結果を表示したり、ユーザーから入力を受け取ったり、何が問題だったかを伝えたりする。開発中は変数を確認するために std.debug.print を使ってきたが、この関数はエラーストリームに書き込む。実際のプログラムが結果を送り出す出力ストリームではない。このチェックポイントではその区別を明確にし、適切なストリームへの書き込みと読み取りの方法、そして画面上の値の見た目を細かく制御する書式指定子を紹介する。
3つの標準ストリーム
プロセスが起動すると、オペレーティングシステムは3つのオープンファイルディスクリプタを渡す:
| ストリーム | ファイルディスクリプタ | Zig のハンドル | 目的 |
|---|---|---|---|
| stdin | 0 | std.io.getStdIn() | ターミナル(またはパイプ)からの入力 |
| stdout | 1 | std.io.getStdOut() | 通常のプログラム出力 |
| stderr | 2 | std.io.getStdErr() | エラーメッセージ、診断情報 |
std.debug.print は stderr(fd 2)に書き込む。これは意図的な設計だ: デバッグ出力はプログラムの実際の結果と分離されているため、シェルのパイプラインやリダイレクトが診断ノイズで汚染されない。ユーザーに見せる出力には stdout に書き込む。
stdout への書き込み
std.io.getStdOut() は File を返す。そこで .writer() を呼び出すと Writer が得られる — 背後にあるファイルにバイトを送り込む方法を知っている値だ。
const std = @import("std");
pub fn main() !void {
const stdout = std.io.getStdOut().writer();
try stdout.print("Hello, {s}!\n", .{"world"});
}
std.debug.print と比べて2点変わっている:
- 関数の戻り値型が
!voidになっている —!プレフィックスはエラーを返す可能性があることを意味する。ファイルへの書き込みは失敗しうる操作(ターミナルが閉じていたり、パイプが壊れていたりする)なので、戻り値型にその可能性を反映しなければならない。 - 各書き込み操作の前に
tryがついている。書き込みが失敗すると、tryはエラーを呼び出し元に伝播する — ここではmainがそのエラーをオペレーティングシステムに返すことになる。
ライター上の print メソッドはすでに知っている書式文字列を受け付ける。writeAll は書式なしで生のバイト列を送る:
try stdout.writeAll("no formatting needed\n");
バッファリング出力
stdout.print を呼び出すたびにOSへのシステムコールが発行される。システムコールはコストが高く — メモリへの書き込みより数千倍遅い。多くの行を出力するプログラムで、小さな書き込みを一度ずつ送り続けると大量のCPU時間を浪費する。
バッファリング I/O は書き込みをメモリバッファに蓄積し、より大きなチャンクにまとめてOSに送る。Zig はこのために std.io.bufferedWriter を提供している:
const std = @import("std");
pub fn main() !void {
const raw_stdout = std.io.getStdOut();
var bw = std.io.bufferedWriter(raw_stdout.writer());
const stdout = bw.writer();
for (0..5) |i| {
try stdout.print("line {d}\n", .{i});
}
try bw.flush(); // バッファのバイトをOSに送る
}
最後の bw.flush() は必須だ — これを忘れると、バッファに残っているバイトはプログラム終了時に黙って破棄される。習慣にしよう: バッファリングライターを使ったら、リターンする前に必ずフラッシュする。
いつバッファリングすべきか?プログラムが密なループで多くの行を書き出す場合だ。単一の出力や、ユーザーが各行を即座に見る必要があるインタラクティブなプロンプトでは、バッファリングは複雑さを増すだけで利点がない。
書式指定子
print の書式文字列は {指定子} プレースホルダーを使う。すでに {} (型のデフォルト)と {s} (文字列)は見てきた。よく使う全セットを示す:
| 指定子 | 意味 | 値の例 | 出力例 |
|---|---|---|---|
{} | 型のデフォルト書式 | 42 (i32) | 42 |
{d} | 10進整数 | 255 (u8) | 255 |
{b} | 2進整数 | 255 (u8) | 11111111 |
{o} | 8進整数 | 255 (u8) | 377 |
{x} | 小文字16進 | 255 (u8) | ff |
{X} | 大文字16進 | 255 (u8) | FF |
{s} | 文字列([]const u8) | "hi" | hi |
{c} | u8 をASCII文字として | 65 (u8) | A |
{e} | 指数表記の浮動小数点 | 0.001 (f64) | 1e-3 |
{any} | 任意の値をデバッグ書式で | .{1, true} | { 1, true } |
指定子には幅と揃え方を含めることができる。まず埋め文字、次に揃え方向(< 左揃え、> 右揃え、^ 中央揃え)、そして最小幅の順に書く:
const std = @import("std");
pub fn main() !void {
const stdout = std.io.getStdOut().writer();
// 幅8フィールドに右揃え、スペース埋め
try stdout.print("{d:>8}\n", .{42}); // 42
// 左揃え
try stdout.print("{d:<8}\n", .{42}); // 42
// 幅8でゼロ埋め
try stdout.print("{d:0>8}\n", .{42}); // 00000042
// ゼロ埋み16進
try stdout.print("0x{X:0>4}\n", .{255}); // 0x00FF
}
幅の後に .N を付けることで浮動小数点の精度も制御できる:
try stdout.print("{d:.3}\n", .{3.14159}); // 3.142 (小数3桁)
stdin からの読み取り
std.io.getStdIn().reader() は Reader を返す — Writer の入力版だ。最もよく使う操作は、区切りバイトまで1行ずつ読み取ることだ:
const std = @import("std");
pub fn main() !void {
const stdin = std.io.getStdIn().reader();
var buf: [256]u8 = undefined;
const maybe_line = try stdin.readUntilDelimiterOrEof(&buf, '\n');
if (maybe_line) |line| {
std.debug.print("you typed: {s}\n", .{line});
} else {
std.debug.print("stdin was closed before any input arrived\n", .{});
}
}
readUntilDelimiterOrEof は区切り文字(ここでは '\n')に達するかファイル終端になるまで buf にバイトを読み込む。戻り値は ?[]u8 — オプショナルなスライスだ:
- EOFの前に少なくとも1バイト読み込んだ場合、
some_sliceを返す(区切り文字自体を含まない、bufの埋まった部分)。 - バイトが読まれないまま stdin が既にEOFだった場合、
nullを返す。
if (maybe_line) |line| 構文はオプショナルを展開する。maybe_line が null なら else ブランチが実行される。値を持つなら、|…| の中の変数 line がそれをキャプチャする。
ほとんどのシステムでは行末は \n だ。Windowsでは \r\n で終わる — スライスには \n の前に \r バイトが残る。きれいな文字列が必要なときは std.mem.trimRight(u8, line, &.{'\r', '\n'}) で末尾の空白を取り除く。
バッファサイズの選択
readUntilDelimiterOrEof は行がバッファより長い場合 error.StreamTooLong を返す。期待する入力に基づいてバッファサイズを選ぼう: 256バイトはほとんどのユーザープロンプトに十分だが、長い行を持つファイル処理には4096以上を使う。
テキストからの数値解析
入力はバイトとして届く — "42" や "3.14" という文字を表す u8 のスライスであり、整数の 42 や浮動小数点の 3.14 ではない。テキストは明示的に解析しなければならない。
整数の解析
std.fmt.parseInt(T, str, base) は文字列を指定した基数で型 T の整数に変換する。戻り値は T またはエラー(error.InvalidCharacter、error.Overflow)だ:
const std = @import("std");
pub fn main() !void {
const text: []const u8 = "42";
const n: i32 = try std.fmt.parseInt(i32, text, 10);
std.debug.print("parsed: {d}\n", .{n}); // parsed: 42
}
基数に 0 を渡すと、パーサーがプレフィックス(0x、0o、0b)から基数を自動検出する — Zig リテラルで使う4つの基数をすべて受け付けたいときに便利だ。
try は解析エラーを伝播する。期待する桁のところに文字があったり、値が i32 に収まらなかったりすると、関数はエラーを返し main はそのエラーで終了する。
浮動小数点の解析
std.fmt.parseFloat(T, str) は文字列を型 T の浮動小数点に変換する:
const std = @import("std");
pub fn main() !void {
const text: []const u8 = "3.14";
const x: f64 = try std.fmt.parseFloat(f64, text);
std.debug.print("parsed: {d:.2}\n", .{x}); // parsed: 3.14
}
parseInt と parseFloat の違いとして、先頭・末尾の空白を受け付けるのは parseFloat だけだ — 入力にスペースが含まれる可能性があるときは、先に std.mem.trim で取り除く。
まとめ: 完全なインタラクティブプログラム
プロンプトを表示し、ユーザーから数値を読み取り、2倍にして返す小さなプログラムを示す:
const std = @import("std");
pub fn main() !void {
const stdin = std.io.getStdIn().reader();
const stdout = std.io.getStdOut().writer();
try stdout.writeAll("Enter a number: ");
var buf: [64]u8 = undefined;
const maybe_line = try stdin.readUntilDelimiterOrEof(&buf, '\n');
const line = maybe_line orelse {
try stdout.writeAll("No input received.\n");
return;
};
const trimmed = std.mem.trimRight(u8, line, &.{'\r', '\n', ' '});
const n = std.fmt.parseInt(i64, trimmed, 10) catch |err| {
try stdout.print("Parse error: {}\n", .{err});
return;
};
try stdout.print("{d} doubled is {d}\n", .{ n, n * 2 });
}
注目すべきパターンがいくつかある:
maybe_line orelse { … }は「nullなら、このブロックを実行してリターンする」の短縮形だ。if (maybe_line) |l| { line = l; } else { … }と同等だが簡潔だ。catch |err| { … }はparseIntからのエラーを伝播せずにキャッチする。|err|の部分がエラー値を束縛し、表示したり検査したりできる。エラーをバブルアップさせる代わりにローカルで処理したいときに便利だ。- プロンプト
"Enter a number: "は改行なしでwriteAllを使っている — カーソルを同じ行に留め、ユーザーがプロンプトの直後に入力できるようにするためだ。
まとめ
- 3つの標準ストリームがある: stdin(入力)、stdout(通常出力)、stderr(診断情報)。
std.debug.printは stderr に書き込む; ユーザー向けの出力にはstd.io.getStdOut().writer()を使う。 std.io.getStdOut().writer()でライターを、std.io.getStdIn().reader()でリーダーを得る。どちらの操作も失敗しうるので、これらを使う関数は通常!voidを返す。- ループで多くの行を出力するときは
std.io.bufferedWriterでライターをラップする。リターンする前に必ず.flush()を呼ぶ。 - 書式指定子は値の見た目を制御する:
{d}は10進、{x}/{X}は16進、{b}は2進、{s}は文字列、{c}は文字。{d:>10}で幅と揃え方を、{d:0>8}でゼロ埋めを指定する。 reader.readUntilDelimiterOrEof(&buf, '\n')で1行読み取る。結果は?[]u8—ifかorelseで展開する。解析前に末尾の\r\nを取り除く。- テキストを整数に変換するには
std.fmt.parseInt(T, str, base)、浮動小数点にはstd.fmt.parseFloat(T, str)。どちらも不正な入力にはエラーを返す;tryで伝播させるかcatchでローカルに処理する。